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この記事を、かつての自分のように、
転職を考えて眠れない夜を過ごしている60前後の同輩に捧げます。
私は長年ものづくりの道を歩んできた職人でした。
幼い頃から手先が器用だと言われ、学校を卒業してすぐに工房で見習いとして働き始めました。
日々の地道な作業の繰り返し、先輩職人からの厳しい指導、
時に深夜まで及ぶ納期との戦い——そんな日々を何十年も過ごしながら、確かな技術を身につけてきました。
その道で培った技術と経験は私のアイデンティティの一部となり、
手の平のシワや傷とともに私の人生を形作ってきました。
予期せぬ転機
しかし、人生は時に予期せぬ方向へ進むものです。
経済情勢の変化や海外製品との競争激化により、長年勤めていた会社が突然の廃業を発表したのです。
当時はただただ茫然としていました。これからどうやって生きていけばいいのか。
半世紀近く磨いてきた技術はもう必要とされないのではないか—そんな不安が私を包み込みました。
そんな時、思いがけず声がかかりました。以前から私の技術を評価していた別の会社からのオファーです。
「あなたの技術が必要だ」という言葉に救われる思いで、その会社に入社することにしました。
これで再出発できる—そう思いました。
現実の厳しさ
ところが、新しい職場の現実は私の期待とはかけ離れたものでした。
表向きは「職人技術の継承」を掲げていましたが、実際はとにかく利益を追求するがめつい経営方針。
次から次へと押し寄せる無理な納期、体力の限界を超えるほどの受注量、
そして若い頃とは違い、ついていけない自分の体力。
朝から晩まで働き詰めの日々が続き、帰宅しても疲労で倒れるように眠る毎日。
休日も疲れを引きずり、かつて楽しんでいた趣味や家族との時間も削られていきました。
そして次第に体調不良のサインが現れ始めました—眠れない夜、常に感じる疲労感、そして時折感じる胸の痛み。
医師からは「このまま続けると重大な健康問題につながりかねない」と警告されました。
60代に入ったばかりの私には、あと何年働けるかわからない中で、
残された時間を病気と闘いながら過ごすのか、それとも別の道を探すのか—その選択を迫られることになりました。
決断の時
長い内省の末、私は自分の身体と心を守るため、最終的に退社を決意しました。
周囲からは「まだ働ける年齢なのに」「せっかくの技術をどうするのか」という声もありましたが、
健康を失ってからでは遅いという思いが強かったのです。
ただ、退社を決めた私の心には不安だけでなく、ある種の希望もありました。
実は仕事の傍ら、私はずっとボランティア活動にも携わっていたのです。
いままでは週末や休日を使って細々と続けてきました。
その経験とスキルが新たな道を示してくれました。
職人の仕事には戻らず、薄給を承知でボランティア活動に専念する道を選んだのです。
年収は以前の3分の1になりましたが、収入減を補うため、年金を前倒しでもらうことにしました。
新たな日々
ボランティア活動に専念する生活は、金銭的には豊かではありませんが、
心の充実感は比べものになりません。
後輩たちに技術を教える喜び、やりがい、そして何より自分のペースで働ける安心感。
生活は質素になりましたが、無理なく続けられる範囲で節約しながら暮らしています。
外食の回数は減り、趣味や娯楽にかける費用も見直しました。
しかし不思議なことに、モノや贅沢を減らした今の生活の方が、心は満たされているように感じます。
以前は高級品や最新の道具にこだわっていましたが、今は本当に必要なものだけを大切に使う生活。
家にあるものを見直し、修理して長く使うという、
本来職人として大切にしてきた価値観に立ち返ることができました。
60代からの転職を考える方へのアドバイス
もし60歳になったばかりで退職・転職を考えているなら、私の経験から言えることがあります。
まず、計画を入念に練りましょう。
私は幸運にも長年続けてきたボランティア活動があったため、比較的スムーズに転身できましたが、
全く新しい分野に挑戦するなら、さらに慎重な準備が必要です。
失敗しないよう、情報収集が何より大切です。
ハローワークや転職の助成金制度など、活用できる支援はしっかり調べておくことをお勧めします。
私も退社後、ハローワークで相談したことで、
思いがけない助成金制度や再就職支援のプログラムについて知ることができました。
また、ご自身のスキルや経験を冷静に分析してみましょう。
長年の職業人生で培ったものは、思っている以上に多様な場面で活かせるかもしれません。
私の場合、職人としての几帳面さや忍耐力、コミュニケーション能力が、
ボランティア活動でも大いに役立っています。
退職を前提に計画するなら、少しの我慢も必要かもしれません。
最後の数ヶ月は辛いと感じることもあるでしょう。
しかし、用意周到に準備することで、道は開けます。
私も最後の半年は歯を食いしばって働きながら、次の一歩のための準備を進めました。
そして何より、金銭面の計画は現実的に立てることが重要です。
収入が減ることを前提に、支出をどこまで削減できるか、貯金をどう活用するか、
年金はいつからもらうべきか—こうした点をしっかり考えておきましょう。
大切なのは健康と心の平和
収入は生活できれば十分だと私は思うようになりました。
それよりも大切なのは、自分の体や心の健康です。
かつての職場では毎晩のように悩み、眠れない日々が続きましたが、
今の私は毎日ぐっすりと眠ることができます。
朝、すっきりとした気持ちで目覚め、今日一日をどう過ごそうかと考える時間。
それは何物にも代えがたい幸せです。
体の不調も次第に改善し、血圧も安定してきました。
以前は常に感じていた肩こりや頭痛も減り、
休日には少し遠出して自然の中を歩くこともできるようになりました。
健康であることの有り難さを、身をもって実感しています。
何より、仕事に追われるのではなく、自分の意志で一日を過ごせることの喜び。
締め切りに追われるストレスから解放され、自分のペースで物事に取り組める安心感。
そして何より、自分の行動が誰かの役に立っているという充実感。
「収入」ではなく「生き方」を選んだ今、失ったものもありますが、
得たものはそれ以上に価値があると感じています。
新たな可能性
最近では、若い方々に技術を教える機会も増えてきました。
今は純粋に技術を伝えることに集中できます。
若い人たちの目が輝く瞬間を見るのは、何よりの喜びです。
また、思いがけず、私の技術を求める声も少しずつ増えてきました。
そこから生まれた小さな副収入は、経済的な助けになるだけでなく、
誇りを取り戻す機会にもなっています。
振り返れば、会社の廃業という一見したマイナスの出来事が、実は私に新たな人生の扉を開いてくれたのかもしれません。
もし、あのまま同じ会社で定年まで働いていたら、今のような充実感は味わえなかったかもしれないのです。
結びに
60代からの人生は、終わりに向かう道ではなく、新たな可能性に満ちた時間だと私は感じています。
長年培ってきた経験と知恵を、どう活かし、どう次の世代に伝えていくか。
そして自分自身の残りの人生をどう充実させるか。
その答えは人それぞれでしょう。私の場合は、ボランティア活動という道を選びました。
あなたにとっての道は、また違うものかもしれません。
大切なのは、自分の体と心の声に耳を傾け、無理なく続けられる道を見つけることではないでしょうか。
収入や地位、肩書きよりも大切なものがある—そんな当たり前のことを、
60になってようやく実感している私です。
この経験が、同じような岐路に立つ誰かの参考になれば幸いです。